「「「「「新年、あけましておめでとう〜!!」」」」」
日付が変わる音がラジオから流れると共に、紡がれる祝いの言葉とグラスが重なる音。
すでにじゅうぶんと言えるほど盛り上がってたはずなのに、さらに盛り上がる面々を見てレニはそっと部屋の隅へと移動した。
窓枠に軽く背中を預け、盛り上がってる中心部を見る。
そこには次々と酒を注がれ、困った顔をしてる大神がいた。
だからといってレニには助ける気は全く無い。
ただ注がれる酒が多種多様だと気づいたので、明日は二日酔いに効くものを用意しないとなとだけ考えていた。
「あれ、ほっておいていいの?」
レニが輪から外れてることに気づいたかえでが、日本酒片手にレニの元へとやってきた。
かえでの視線の先を追って「あれ」が何か気づいたレニは、ただ頷くことだけで答えた。
「あら、薄情な奥様だこと。」
そこに責めるような響きはなく、だからこそレニも笑って返した。
「慕われてる証拠だからね。」
気心知れた仲間たちだからこそ、みんなが何をしようとしているのかわかる。
ほっとくと自分の身を削ってまでもみんなのために動いてしまう大神を、無理矢理でも休ませようという魂胆。
たぶん気づいてないのは大神本人だけであろう。
そんなところには溜息をつきたくなるレニだが、それも含めて大神なのだからと思わず苦笑いしてしまう。
そしてそこでふと一つの星を思い出した。
周りに支えられながらも輝こうとしている星。
昴とかから話を聞くには、頑張りすぎて同じような状況になってしまう時があるとか。
こういうところは血筋なんだろうかとレニは思った。
「レニも落ち着いてきたわね〜。
少し前までは女の子に囲まれてる大神くんを見てハラハラしてたしてたのに。」
かえでが面白そうに顔を覗き込んでくると、レニはすっと目を逸した。
こういう話にレニはいつまでたってもなれない。
すぐ顔を真赤にして黙りこんでしまうので、みんな面白がってからかってしまう。
かえでもその一人で、ずっと面白そうにレニの顔を覗き込んいた。
そんなかえでの視線に耐え切れずレニはぼそっと答えた。
「隊長を信じてるから……。」
更に顔を真赤にして答えるレニを見て、かえでは満足そうに笑ってレニの頭を撫でた。
小さく無表情で今にも消えてしまいそうだった少女。
生きて欲しい、幸せになってほしいと願ってた。
そんな幼子が成長し恋をして、そして相手を信じてるのだと幸せそうに言うのだ。
嬉しくないはずはない。
かえでは満ち足りた気分で頭を撫で続けた。
そんなかえでを見上げようとした所で、何かが倒れる音がした。
そちらに視線を向けると、大神がとうとうダウンして床に這いつくばっているのが見えた。
「いってらっしゃい。」
かえでがレニの背中を軽く押すと、レニは頷いて大神の元へと歩いていった。
大神が部屋へと運ばれていくと、みんな続々と片付け始めた。
「さあ、これからは私の出番ね。」
かえでは腕まくりすると、嬉しそうに片付けを手伝いにいった。
遅くなりましたが、2012年の新年お祝い小説です。
脱線につぐ脱線で、当初考えてたものとは全く違うものになってしまいました;
あれ???
2012/1/8up
2013/5/31収録