「やっぱり、だめ?」
縋りつくような懇願する目で見上げられ、俺は心の中でうなった。
出来ることなら彼女の願いをかなえてあげたい。
でもそうしたら俺は………
一度前例を作ってしまったのが悪かったんだ。
不安になってる彼女をほっておけないし、頼られて甘えられるのは正直嬉しい。
だがそれは時と場合によるんだと俺はしみじみ実感した。
目の前には俺のあげたワイシャツを着たレニが期待をこめて俺を見つめている。
彼女が今俺に求めてるのはぬくもりだけ、添い寝をして欲しいとのことだった。
「レニ、ここで寝るというのは1番危険な行為だぞ。」
俺はかなり真剣に忠告した、が
「危険って何?
帝劇の中、しかも隊長の隣にいてどんな危険があるというの?」
無邪気に聞き返されてしまった。
(その俺が1番危険なんだ!)
さすがにそんなことは言葉にして言えず、心の中だけで突っ込む。
「はぁ〜〜〜。」
もう10分近くもこんな押し問答を続けている。
明日も早いからいい加減決着をつけなくてはならない。
断れば悲しい顔をするかもしれないが、ここは心を鬼にしてきっぱりと断ろう!
そう思い再び顔を上げた瞬間、レニは俺の目の前に来てこういった。
「やっぱり、だめ?」
つくづく俺は意志の弱い人間なんだと思った。
嬉しそうに俺のベットに入るレニを見ながらもう何度目になるかわからないため息をつく。
「おやすみなさい。」
でもまあ、笑顔で挨拶をするレニを見て仕方ないかと思った。
レニの笑顔が見れるのなら、一晩ぐらいの寝不足など我慢しよう。
「おやすみ、レニ。」
レニの眠りを誰にも邪魔されないよう見張り番をするような気持ちで俺もベットへと入った。
2度あることは3度ある、いったい誰が言い出した言葉だろう…。
ともかく5度目になったとき、俺はかえでさんに泣きついた。
もうさすがに勘弁してくれ。
アップした順番としてはこちらの方が先だけど、順番としては「朧月夜」の後なのでこちらに持ってきました。
ショートギャグを狙ってみました(笑)
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