暖かくなってきたといえどまだまだコートが手放せない気温の午後、ボクは全身を支配するけだるさをそのままに自分のベットに寝転がっていた。
視線の先にいるのは服を着ている隊長、脱ぐところは何度も見たけど着るところははじめて見る。
シャツを羽織りボタンを留め、ズボンをはいたところで隊長の手が止まる。
キョロキョロしてる隊長を見てネクタイが見つからないんだということに気づいた。
記憶をたどったボクは起き上がり枕の下を見るとそこに目当ての物があった。
「隊長。」
ネクタイを持って声をかけると「そこにあったのか。」と隊長がベットのそばへとやってきた。
「ボクが結んであげようか?」
ネクタイに手を伸ばした隊長にボクはそう提案した。
意味はなかった、ただふとそう思っただけ。
「え?」
突然の言葉に驚いてる隊長を尻目にボクはベットの上に立ち上がると素肌の上から手早く毛布を体に巻きつける。
そして隊長のネクタイを左手に持ち手招きすると、隊長はやっと意味がわかったように笑ってもう1歩ベットのそばへと近づいた。
隊長の首の後ろに手を回しネクタイを巻きつける。
自分でつけるのと少し勝手が違ったけど、きちんと結べたことに満足して少し微笑んで終了を告げた。
「ありがとう、レニ。
 でも、この体勢ってすごくそそられるんだけど………。」
苦笑するように言う隊長の視線の先を追っていくと、行き着いた先は毛布から半分出ていたボクの胸だった。
ネクタイを結ぶのに夢中になってる間にずれてきたみたいだ。
ボクは恥ずかしくなって慌てて隊長から離れ毛布にうずまった。
そんなボクを見て隊長は「何をいまさら。」とくすくす笑うけど、恥ずかしいものは恥ずかしい。
「今日はもう十分食べたから、また今度食べさせてもらうよ。」
そういって隊長はボクに軽いキスをすると部屋を出て行った。
隊長の言葉にさらに赤くなったボクは、休日を満喫してきたみんなが帝劇に帰ってきてもしばらく部屋から出ることすら出来なかった。

それからというもの夜を共に過ごした日はボクが隊長のネクタイを結ぶようになった。
些細なことだけどいつの間にかそれがボクのひそかな楽しみとなっていた。


ある日のこと、訓練でかいた汗をお風呂で流し部屋に戻ろうと2階への階段を上りかけたところで隊長を見つけた。
声をかけようとしたところで隊長に向かって誰かの手が伸びてきた。
ちょうどボクから死角になる位置に誰かいたようだ、声からいってさくら。
でもボクは二人の会話は耳に入ってなかった。
隊長に伸ばされたさくらの手はネクタイへと伸びていた。
それを理解したとたん黒い感情がボクの中を渦巻きだした。
その感情に体中が支配されて一歩も動けずにいると、さくらと別れた隊長が階段を下りてきてボクに気づいた。
「やあ、レニ。
 ……………レニ?」
ボクが言葉を返せずにいると隊長がどうしたのかと顔を覗き込んできた。
今の顔を隊長に見られたくないと思ったボクは、隊長を押しのけ自分の部屋に駆け込みベットへとうつぶせに寝転んだ。
「レニ!?
 いったい、どうしたんだ??」
突然のことに驚いた隊長は戸惑いながらもボクの部屋へと入ってきた。
ドアが閉まる音を聞きながら、ボクは入ってきたときにドアの鍵を閉めなかったのを悔やんだ。
隊長はベットの端に腰掛けると何も言わずただボクの頭をなでた。
頭の頂点から首の方にかけてゆっくりゆっくりと何度も。
その行為にボクのささくれた心もだんだんと落ち着いていった。

「隊長…。」
気まずくて顔が上げれなかったボクは小さく隊長の名を呼んだ。
「なんだい?」
どんなことも包み込んでくれる優しい気持ちがつまってるような言葉だった。
だからボクはベストのすそをぎゅっとつかむと、思い切って言ってみることにした。
「ネクタイ……、隊長のネクタイ、ボク以外の人間に触らせないで。
 お願い……………。」
なぜ隊長のネクタイを結ぶのが楽しかったのかがやっとわかった。
ネクタイは首に締めるもの、要するに簡単に命を奪えてしまうものを隊長がボクに預けてくれているというのが嬉しかったんだ。
そして隊長はボクのものという独占欲を満たしてくれるもの。
だから他の人に触られたとき嫉妬でいっぱいになった。
でもこれはボクのわがままだから聞いてもらえなくても仕方ない。
そう…思ってたのに、隊長はいったん驚いたあとわかったと笑ってくれた。
「これからはレニ以外にはネクタイを触られないようにするよ。」
そういってボクのまなじりにキスをする。
ボクは嬉しくなって隊長の手をぎゅっと握って笑った。

そのあとボクは立てなくなるぐらい隊長に食べられてしまった。
途中で嘆願したけど約束を守る代わりだといわれたら逃げられなくなってしまった。

ネタ元はVから、五番街のネクタイ話。
思いついてから出来上がるまで2転3転してだいぶん話が変わっちゃいましたが(苦笑)
レニの甘い話に飢えていたからどんどん甘くなったよ(−−;)

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