大空を鳥たちが群れをなして飛んでいく……
それをレニは帝劇の屋根の上に登って見ていた。

 ボクも鳥になりたい
 鳥になって巴里へ、あの人のところへ飛んでいきたい

レニは自由に動けぬ我が身を悲しんでいた。
帝劇にいたいと望んだのは自分自身、なのにそれが1番そばにいたいと思う人と別れることになるとは思ってもみなかった。
あの人が守ってきた街を守り続けるということは大切だし誇らしい。
でもあの人に会いたいという気持ちは募っていく一方で……。

 鳥になって飛んで行ってあの人のそばにいたい
 たとえ人間に戻れなくても、ボクだとわかってもらえなくても、そばにいれたらそれでいい

レニの切なる願いは叶うはずも無く、次第に暮れていく空にため息をつくと帝劇の中へと戻っていった。



「……そんな風に思っていたはずなのに。」
レニは後ろから回された自分を抱きしめる腕に手を置いた。
「ボクはどんどん欲張りになっていく。
 あのときの願いは叶ったはずなのに、この手を、このぬくもりを無くしたくないなんて…。」
そう言ってレニは後ろへともたれた。
どんどん欲張りになっていく自分を止められなくて、でも知って欲しくて。
顔を見て直接は言えないけど、後ろから抱きしめられている今の状態ならと思い会えなかった時のことを話した。
「俺も同じ気持ちだよ。
 あの時は俺もそばにいたいとだけ思った。
 でも今はこの腕を絶対離さない、どこへも行かせない。」
さらにぎゅっと抱きしめられ耳元でささやかれる言葉に、レニは身体中がしびれるような感じを受けた。
「うん、離さないで。ずっとそばにいて。」
振り向いたレニの唇に熱いキスが何度となく降りてきた。

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