ひらひらひら ひらひらひら

ひとつふたつと思い出したように桜の花びらが散っていく。
桜は満開、空は雲ひとつもないほどの快晴、ぽかぽか陽気も重なって絶好のお花見日和だ。
「おっはな♪ おっはな♪」
前を歩く娘のレナはすごくご機嫌でジャンプをしながら歩いている。
本人はスキップをしているつもりなのだろう、うまく出来てないけどそんなところが愛らしい。
それが証拠にレナがはぐれないように手を繋いで一緒に歩いている兄の志狼も俺の隣を歩く妻のレニも微笑みながらレナを見ていた。
そんな家族を見ながら俺はあいてる場所がないかと周りを探っている。
さすがにこんなお花見日和の日はどこもかしこも人でいっぱいだ。
数分歩いた後、やっとおめがねにかなう場所を見つけて俺たちはそこに座った。

「いたーきます!」
色とりどりに並べられたお弁当を見て、レナは目をキラキラさせながら勢いよく食べ始めた。
好物の鮭を使ったおにぎりをぱくついたレナは「おいし〜ね〜。」と志狼に向かって微笑んでる。
志狼もうなずきながら美味しそうに食べている。
「うん、美味い。
 レニ、また一段と腕を上げたんじゃないか?」
俺はささみと菊菜の和え物を食べながら隣に座るレニにそう言った。
「ありがとう、でもまだまだだよ。
 料理って奥が深いね。」
レニはにっこりと笑ってそう答えた。
俺はもう十分なほどレニの料理の腕は上達してると思ってるのだが、レニ自身はまだまだ満足していないらしい。

「レニも1杯飲むか?」
子供たちが食べ終わって近くで遊びだした頃、俺はレニにお猪口を差し出した。
「…そうだね、1杯ぐらいなら。」
レニがお猪口を受け取ったので、俺はそこに酒を注いだ。
「ありがとう………あっ!」
「………風流、だな。」
レニが酒を飲もうとしたとき、偶然にもお猪口の中に桜の花びらが舞い込んだ。
俺たちは顔を見合わせて笑った。

「まま〜〜。」
レナがとぼとぼとレニのところへ歩いてきた。
「どうしたの?」
レニが尋ねたがレナは答えずにレニの胸にすがりついた。
「遊び疲れたんだな。」
俺がそういってる間にレナは目を閉じてすやすやと眠ってしまった。
俺はジャケットをぬいでレナにかけた。
レニはレナが寝やすいように動かしたあと「おやすみなさい。」と言った。
そのとき一陣の風が桜の花びらを巻き込み去っていった。
それを見ながら俺はいろんな意味をこめて言った。
「平和だな。」
「うん。」

なんとなく書きたくなった大神家のお花見風景。
レナのモデルはもちろん緋翠です(笑)
時期としては太正25年、レナ2歳・志狼7歳です。

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