「なってみてわかる、親の気持ち……か。」
大神はしみじみとつぶやいた。
「どうしたの、突然?」
大神のすぐ横で洗濯物をたたんでいたレニが不思議そうに大神を見てたずねた。
「さっき図書室に行った時にレナが真剣に台本を読んでたんだ。
クリスマス公演で初めて主役を演じることになって気合が入ってるのはわかるんだが、その相手をしてたのがアイツだったんだよ。」
はじめはやさしい顔をしていた大神だが、その場面を思い出したのかとたんにしかめっ面になった。
レニはそんな大神の表情を見てくすりと笑った。
15歳になった自分たちの娘、レナは最近特に女らしく綺麗になってきた。
その理由は恋をしているからだと一目で気づいた。
相手は同じ花組の隊員、近頃は二人だけでいるのを見かけるようになってきた。
レニは自分が大神と出会ったのと同じ年齢ともあって、懐かしいようなほのぼのとした気分を味わっていたのだが、どうやら大神は違うようだ。
「二人でいるのが気に食わないの?」
「娘に近づくな!といいたい気分だった。」
「でも、一郎さんは彼のことそれなりに認めてるでしょ?」
話しながらレニはたたみ終わった洗濯物をチェストへと入れていく。
「それとこれとは別問題。
レナが生まれたときに父さんから言われたんだよ、男親はつらいぞって。
いくら頭でわかってても感情のほうは納得いかなくて、それでも嫁に出さなくてはいけないからって。」
そこまで一気に言った大神は、目の前においてあった酒を一気にあおった。
「それを聞いたときは俺はそこまでって思ったんだけどな、いざ現実を目の当たりにすると……。」
納得いかないのか、さらに苦味つぶしたような表情になって黙ってしまった。
洗濯物をなおし終えたレニは大神の隣に座るとぽんぽんと大神の背中を優しく叩いた。
「娘の心配もいいけど、ボクとしてはもうちょっとボクに目を向けてほしいかな。」
「え?」
大神は意味が理解できなくて思わずレニの顔を見つめた。
「一郎さんは二人を見て嫉妬してたみたいだけど、ボクはあのころの気持ちを思い出してたんだ。
最近はずっとお父さんお母さんしてたから、たまには恋人に戻りたいなって。」
さすがにちょっと恥ずかしいのか、レニは少し視線をそらせて少し早口で言った。
大神はレニからめったに出ない言葉が出てきたので、呆然としていた。
「だめ?」
大神から返事がないので、レニは首をかしげて不安そうな目をして尋ねた。
それこそあのころのような表情で。
「そういうおねだりは大歓迎!」
やっと現実に戻ってきた大神はうれしそうにぎゅっとレニを抱きしめた。
「なってみてわかる親の気持ち」という内容の話をたて続けでみたので、じゃあ大神さんとレニがその立場になってみたらどうなるかなぁ〜と思ったのが最初でした。
結局イチャイチャになるんだよ(爆)
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