レニは抱えていた赤ちゃんをベビーベットへと寝かせた。
赤ちゃんはすやすやと眠っていて、ベットの置かれたことに気づかない。
そんな赤ちゃんの顔を覗き込み、レニは微笑んだ。
「レニも疲れただろう? 一眠りするかい?」
大神は自分が運んできた荷物を片付けながらレニに尋ねた。
レニが赤ちゃんを産んでから約一週間、病院を退院しちょうど今帝劇に戻ってきたところだった。
「ずっと寝てたからボクは大丈夫だよ。」
「そうか。
 みんながパーティーをしてくれるって。
 準備が出来たら呼ぶって言ってたからそれまでゆっくりしてたらいいよ。」
「うん、ありがとう。」
レニはベットに座り自分の赤ちゃんを見つめた。
大神は荷物を片付けた後、レニの隣に座り肩を抱き寄せた。
「レニの心配は杞憂に過ぎなかったね。
 大丈夫、この子は元気に育つよ。」
「うん。」
レニは返事をすると大神の胸に頬を摺り寄せた。
大神はそんなレニを優しく抱きしめながら、そのときのことを思い出していた。



子供は予定日を過ぎてもなかなか生まれては来なかった。
予定日から1週間過ぎたとき、過去に投与された薬の影響が出たのだと自分を責めた。
「お願い、生まれてきて…。」
涙を流しながら切なげに言うレニを大神はただ抱きしめることしか出来なかった。
やっと陣痛が始まったのは夏公演初日の前夜だった。
みんな心配で病院までついてきたが、2時間ほど経過した頃大神が帝劇に帰した。
シーンと静まり返った病院の廊下に、レニの苦しむ声だけが響き渡る。
大神は何も出来ない自分が歯がゆく、ただひたすら二人の無事だけを祈っていた。
空が白み始めた頃、突然赤ん坊の声が響き渡った。
やっと赤ん坊が生まれたのだ。
大神がレニの元へ行くとレニは涙を流していた。
「赤ちゃん、泣いてるね。生きてるね…。」
疲れきった弱弱しい声だけど、レニは微笑んでいる。
大神はレニの手をとり己の額に押し付けた。
「おつかれさま、レニ。そして…ありがとう。」



赤ちゃんの手が動いたのを見て、大神は息子が目を覚ましたことに気がついた。
「起きたようだな。」
そう言うと大神は息子を抱きかかえた。
「あんまり抱っこすると、抱き癖がついちゃうからダメだよ。」
レニが軽く注意するが大神は聞かない。
「少しぐらい良いじゃないか。な、志狼?」
大神が顔を覗き込んだとたん、赤ちゃんは大声で泣き始めた。
それと同時に大神の服に濡れたようなシミが出来ていく…。
「レニ、やられた…。」
大神の苦味つぶしたような顔を見て、レニは笑いながら赤ちゃんを引き取った。
といことで、久々のSSはリクSSでした。
というか、これに悩みまくってたせいで他のが出来なかったというか…
「子育て」がリクだったのに、どう見ても育ててないし(T−T)
思った以上に大変でした、没になったSSもたくさん。
これ何かに使えないかなぁ〜?(爆)

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