大神がレニを抱えて翔鯨丸へ乗り込むと、花組隊員たちが心配して駆けつけた。
霊力を消耗して自力で立つことができなくなっていたレニはそのままでみんなに答えた。
「私は大丈夫。
 それよりみんな、怪我はない?」
うなづく一同にレニはほっとした表情を見せた。
「この戦闘の反省会は明日行う。
 各自、今日はゆっくり休みなさい。」
各々休むべく散っていく中、志保だけがその場を動けずにいた。
レニに話しかけたいのにどう言ったらいいのかわからない……そんな表情をしていた。
「……志保。」
レニが声をかけると志保はビクッと震えたあと固まった。
そんな態度にレニもどう声をかけたらいいのかわからなくなった。
「君ももう休みなさい。」
大神が見かねて志保に声をかけた。
「でも支配人、私はっ!」
「レニは気丈に振舞っているがかなり消耗している、早く休ませたいんだ。
 君もかなり疲れているだろう?
 今は何も考えずに休むんだ。」
大神の言葉に志保はうつむいた。
「………わかりました。」
とぼとぼ歩いていく志保の背中をレニが痛ましそうに見る。
そしてそんなレニを見て大神も心を痛めていた。


「すまないレニ、すべてを押し付けてしまって。」
帝劇へ帰還後、レニを部屋のベットに寝かせると大神がそういった。
大神は自分の仕事が忙しく、花組隊員に関する事をすべてレニにまかせっきりにしている状況を常々心苦しく思っていた。
だから今回こんな危機的状況に陥ったのは自分のせいでもあると思っていた。
「今の花組隊長はボクだから、花組をまとめるのはボクの仕事。
 それをまとめきれなかったのはボクの力不足であって、隊長のせいじゃないよ。」
「レニ………。」
「隊長はどんなときでもあきらめずに進んでボクたちの信頼を得、まとめてきた。
 だから今度はボクがそうする番。
 あきらめずに前に進んでみんなをまとめてみせるよ。」
にっこり笑って答えるレニに大神は苦笑した。
「まったく、レニにはかなわないな。
 なぐさめるつもりが、こっちがなぐさめられたよ。」
そんな大神の態度が面白かったのか、レニがくすくすと笑いだす。
大神はレニの頭をゆっくりとなで始めた。
「さあ、もう休むんだ。
 レニが眠るまでそばにいるから。」
レニはうなづくと眼を閉じた。
大神はレニが眠るまでずっと頭をなでていた。


後日談
このときレニはいつの間にか大神の服のすそをぎゅっとつかんでおり、レニを起こしてしまうのではと躊躇した大神はなかなかレニの部屋から出られなかった。
このことと戦闘で颯爽とレニを助けたこと、さらにずっとレニを抱きかかえてたことでさまざまなうわさが飛び交った。
『2人がいつ結婚するか?』
いつの間にか始まっていた賭けが帝劇中を駆け巡るのにそう時間はかからなかった。
前回の戦闘直後の話。
どう考えても2つで1本だろうと思って「2」としました。
前回は戦闘シーンが書きたいと思ってその勢いで書いて満足してたのですが、落ち着いたあとすっと今回の話が浮かんできました。
ちなみに後日談は本当におまけ。
なんとなく落としてみたかったのだ(爆)

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