「プロの仕業か…。」
そういって隊長は難しい顔をして考え込んだ。
帝劇到着から一夜明けた今朝、戦闘に勝利したボク達に米田指令狙撃の報が入ってきた。
病院に駆けつけたボク達に知らされたのは意識不明の重態という事実。
だからといってボクの生活が変わるわけでもなく、鍛錬をするための準備をしてるところで隊長の訪問を受けた。
質問をされたのでボクは得た情報を元に意見を言った。
ボクの言葉を受け隊長はどういう答えを出すのか、軽い興味を覚え考え込む隊長の顔を見ながら静かに待った。
「支配人が狙われたのは中将としてなのか、それとも帝撃の総司令としてなのか…。
 総司令として狙われたのなら他にも何か仕掛けてくるかもしれないな。」
合格ラインの答えを出したことにボクは満足した。
「帝劇の警備体制を強化しなくては…。
 それじゃ俺はもう行くことにするよ、ありがとうレニ。」
隊長はそういうとボクの部屋を出て行った。

それから行った鍛錬は調子がよく、いつも以上の成果が出た。
正確な判断材料を持たないボクはそれは体調がよかったせいだと判断した。
ボクの中で何かが変わりかけてるのだということも気づきもしないで。
だからその後起こった出来事も隊長がボクの性別を正確に理解しただけと認識しただけだった。


次の日、ボクは神崎邸の中庭を走っていた。
襲ってくるボディーガードたちの急所を突き的確に戦闘不能にしていく。
必要なのは時間だけ、命までとる必要なし。
ボディーガードと言えど所詮は実戦経験のないものたち、5分もしないうちに全員が地に伏せた。
「さ〜て、あなたはどうするんですか〜?」
織姫が嬉しそうに宮田と名乗った執事に迫った。
観念した執事はその場にがっくりと膝をついた。
それを見たさくらとアイリスは手をたたきあって喜んでいる。
織姫も満足そうに微笑んでいる。
そしてボクは自分の行動に葛藤していた。
ここに来ることは誰にも命令されていない。
神崎すみれが花組に戻ってくれば確かに戦力の増強になるが、それはボクがいなくても十分実行できたはずだ。
命令がなければ待機、それが常であったはずなのに思わず「ボクも行く。」と言ってしまった。
今までになかった自分の行動に戸惑っていると、どこからか蒸気機械の駆動音が聞こえた。
それと同時に感じる妖気。
本当の敵が迫ってることを感じ、ボクは今までの葛藤を振り切り戦闘体制に入った。

その日の夜、ボクは作戦指令室にて今日の戦闘の映像を見ていた。
主に花組に戻ってきた二人、桐島カンナと神崎すみれのをだ。
無手の近距離型と長刀の中距離型。
前線の布陣が整いつつあるのに対し、遠距離を得意とする機体がなく後方が心もとない。
敵の遠距離攻撃に対しては避けるだけしかできない状況だ。
これをどうするか、それを考えていたときに隊長が作戦指令室に入ってきた。
それからボクたちは現状に対しどう対処するかを話し合った。
士官学校主席卒の学歴は伊達ではなく、この話し合いはボクを大いに満足させた。


夏の日差しがきつくなってきたある日、隊長が仔犬を拾ってきた。
帝劇で飼うことになり名前をどうするかで盛り上がっている。
どうしてこんなことで盛り上がれるのかボクにはさっぱりわからない。
「レニはどんな名前がいいと思う?」
輪から離れるように立っているボクに突然隊長が話しかけてきた。
「フント。」
名前は個々を区別するための記号でしかない、だから考えるまでもなくただ犬とだけ言った。
なのになぜか採用された。
いったいどういう基準で選んでいるのか?
理解しきれないまま解散となったので、日光浴をするためにそのまま中庭へと行った。
帝劇にきてから釈然としないことが多すぎる、ベンチに座り込みボクはそう思う。
ボクの存在理由は兵士としての戦闘能力、それは今だって変わりはないはずだ。
なのにここでの扱いは今までとはまったく違っている。
ほっとけばいいのにいちいちボクを巻き込んでいく。
そのたびにわからないことが増えていく。
処理できない事柄に悩んでるとき中庭に人の気配が入ってきた。
隊長だ、ボクがベンチにいるのに気づいてこっちに向かってきた。
でも今のボクは隊長を相手にするのも、なぜかずっとそばにいた犬の相手をするのも億劫だった。


燃え上がる家屋を背に火車は楽しげに起爆装置を持ち上げた。
ボクたちの間に緊張が走る。
避難所に爆弾を仕掛けたという火車の言葉、もしそれが本当なら多大なる被害が出る。
そうなれば今回の作戦は失敗も同然だ。
どうすれば被害を最小限にとどめられるか、そう考えていたところで銃声が鳴り響き火車の手から起爆装置が離れた。
「……間に合ったようね。」
「マリア!」
周りから聞こえてくる声に起爆装置を撃ったのがマリア・タチバナだと知る。
そのまま合流し、花組は一気に反撃へと移った。
彼女の入った花組は格段にレベルをアップさせていた。
隊長の指示に従いつつも攻撃範囲の広い銃の特性を生かし仲間のフォローに回っている。
さくらの攻撃で沈黙しなかった脇侍に止めを刺し、カンナの隙を狙ってきた脇侍の動きを止めカンナに反撃のチャンスを作る。
一つ一つの動きが正確で無駄が無い。
そう判断したときボクの横を弾丸が駆けていった。
「大丈夫?」
かけられた声にボク自身にも隙ができていたことを知る。
「…………問題ない。」
ボクの声を聞いた彼女はさっさと他の仲間のところへといった。
少し唇をかんだ後、神経を集中させた。
ボクの任務は敵を倒すこと、敵を倒すんだ……。

戦闘終了から数時間後、ボクは作戦指令室へと向かった。
次の戦闘のために今回の戦闘を分析するのがボクの常だったから。
地下まで降りたときに隊長の気配を感じた。
ボクが分析してるときに隊長もよく来るからそのためかと思ったが、すぐにマリアという人物の声が聞こえた。
とっさに気配を隠したボクの耳に届いたのはさっきの戦闘の話。
ボクが隊長とするはずだった戦闘の話。
ボクは知らず知らずのうちにまた唇をかんでいた。
→愚鈍なまでに真っ直ぐな

2の細かい台詞忘れちゃったのでめちゃくちゃ書いてたりしちゃってます(爆)
そして戦闘についてのことがいっぱい、戦略とか苦手なのに…_| ̄|○
無い知恵絞って必死です(汗)

2005/12/13

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