蒸気演算機にて熱海の地形を調べる。
海のすぐ近くまで山がせり出している特殊な地形だ。
もし敵襲があったとしたら、山側から迎え撃つか海側から迎え撃つかで配置が変わってくるだろう。
そんなことを考えてたら、隊長が作戦司令室に入ってきた。
「感心だけど、休む時は休めよ。」
ボクの考えを話すと隊長はそう言って笑った。
それで引っかかっていた何かが無くなったような気がした。
カチャカチャカチャ
熱海へと向かうバスの中、席に座ってるボクの隣からずっとそんな音が聞こえていた。
紅蘭が何かを作ってるようだ。
ゲームや会話に夢中な他のメンバーは気づいていない。
鼻歌を歌いつつ作られてる物体に、ボクは危険を感じた。
逃げるほどではないが、何があってもすぐ対応できるようにしておいた方がいいだろう。
その考えは正しかった。
ボクは何の影響も受けずに宿に到着することが出来た。
花組のメンバーはいつも騒がしいと思うが、ここに来てさらに騒がしいと思った。
到着早々砂浜まで連れていかれ、夕食の時も食材で大騒ぎだった。
そして今、枕投げというものをやるらしい。
特に参加する気はなかったが、言われたので投げてみたら隊長が枕に当たりそうになってたマリアをかばった。
その行動に米田が退院した日のことを思い出した。
マリアの夏服を褒めていた隊長……
無くなったと思った引っ掛かりがまた姿を現そうとしてるのに気づいた。
「レニ、大丈夫か?」
その言葉に視線を向けると、飛んできた枕から隊長がボクをかばったところだった。
たとえゲームといえど、気を抜いて枕が近くまで来てたことに気づかなかった。
そのことに愕然としてるうちにカンナが障子を破り、枕投げは終了となっていた。
次の日、ボクはアイリスに連れられて海へといった。
すみれや隊長も一緒だった。
特に泳ぐ必要性も感じなかったから、水着にも着替えず砂浜に座っていた。
「ねぇ、レニも泳ごうよ。」
アイリスに言われるがまま隊長を砂に埋めていたボクにアイリスがそう声をかけた。
「ボクはこのままでいい。」
そう言ったがアイリスは聞かず、ボクを宿に連れ帰り着替させた。
「そういえば、アイリスはじめてレニのみずぎを見た。」
ボクが裸で泳いでいると知ったかえでさんが用意させた水着。
シンプルなデザインだったので、これなら泳ぐのにたいして邪魔にならないと思った。
「よく似合ってるよ〜♪
お兄ちゃんやすみれはどうおもうかな?」
人の評価などどうでもいいはず、なのになぜか聞いてみたいと思った。
「か、かわいい……。」
面と向かって言われた言葉に、ボクはどこか落ち着かなくなった。
そしてアイリスに引かれるまま海へと入る。
「つめたい…。」
考えてみれば水中訓練とかで水に入るのは慣れていたが、実際の海に入るのは初めてだった。
日本の湿度の高い暑さに火照っていた身体が、すっと冷やされていく。
プールとは違う身体に感じる浮力も新鮮だ。
この時のボクは初めて入った海に気を取られていた。
なぜ身体が火照っていたのかをよく考えずに……。
長くなりそうだったので、途中で切りました。
約5年越しの続きです;
6話のあの状態になるにはどういう過程があったのか…、ものすごく悩みました。
2010/9/23
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