「お前は何のために戦うのか?」
舞台の上の話だった。
芝居の上での言葉だった。
セリフは完璧に覚えていた。
なのに喉に言葉が引っかかって出てこなかった。


「役が……降りてこないんだ……。」


ボクは自分の部屋へと戻ってきた。
芝居をすることも任務の一つ、これは任務を放棄したのも同然だ。
でも舞台へと戻る気にはなれない。
ボクはわからなくなった。
与えられた任務は完璧にこなしてきたはずだ。
なのに今まで出来ていたことがどうして出来ない?
わからない。
帝劇の、花組のメンバーの行動も分からないことが多かった。
なぜそんなことをするのか?
必要がないと思う事柄を進んでやり、笑顔を見せる。
星組ではこんなことはなかった。
戦闘訓練と舞台、それ以外にやることはなかった。
そう、戦うことが存在理由。
ボクがここにいる理由。

『何のために戦うのか?』

さっきの言葉が蘇ってきた。
何のために?
ボクがここに来たのは命令されたから。
何のために命令された?
戦うために。
では何のために戦うのか?
………わからない。


「レニ、話がしたいんだ!」
隊長の、声だった。
堂々めぐりになった思考に答えがもらえるかもしれない。
そう思って扉を開けた。
でも無理だった。
帝都なんて知らない!
話したことない人なんて知らない!!
その時ふと頭をかすめたのは作戦司令室にいる隊長とマリア。
戦闘後、司令室に戻って解析をしてたのはボクだった。
その後隊長が来て解析結果を元に話しあっていた。
なのにマリアが戻ってきた後、ボクは作戦司令室に入れなくなった。
ボクが話せるのはあくまで戦力と戦略、戦う部分だけのこと。
でもマリアは花組の心情まで考えて隊長にアドバイスをしていた。
ボクの居場所は、なかった。
なぜボクはここにいるの?
なぜボクは戦うの?
わからない。
わからない。
わからない………


「レニに少しでも元気になってほしくて。」
そう言って花かざりをくれたのはアイリスだった。
隊長も一緒にいて、みんなも心配してると言ってくれた。
ボクはここにいていいの?
花かざりを抱きしめると胸の奥がほんのりと暖かく感じた。
「アイリス、隊長、花組のみんな…。」
「そんなの必要ないワ。」
唐突の声にボクはびっくりした。
「サ、サキさん?」
何かを思う暇もなく、ボクの意識はそのまま闇へと消えていった。


………
……………ニ
………………レニ
暗闇の中、かすかに声が聞こえた。
声が聞こえた方に目を向けると、小さな光が見えた。
耳をすますと光の方からみんなの呼ぶ声が聞こえた。
光の方に行きたくて手を伸ばすも、身体が何かに囚われてるようで言うことを聞かなかった。

レニ
レニ
レニ

みんながボクの名前を呼んでいる。
ボクは光に向かって必死に歩いた。
一歩ずつ進めば進むほど、みんなの声が大きくなってくる。

「お願いレニ、めをさましてーー!!」

アイリスの叫びが聞こえてくる。

「泣かないでアイリス、もうすぐそこに行くから。」

アイリスの泣き声を聞きたくなくて、ボクはさらに力を入れて進んだ。

「俺は、敵じゃない!」

光の先にうっすらと隊長が見えた。
隊長に向かって槍が向けられる、ボクのアイゼンクライトの槍。
思わず手を伸ばすも届かない。

「レニ、俺達は一緒に劇をした仲間じゃないか!」

傷つけられながらも、隊長は必死にボクに向かって話しかけている。

「うん、仲間…だよ。」

今は素直にそう思えた。
大切な仲間、だからこそ絶対みんなのところへ戻る。
そう決意すると、隊長は花かざりを取り出して掲げた。

「レニーーーー!」
「たいちょーーーー!」

ボクは力のかぎり光に向かって手を伸ばした。


気がつくとボクは隊長に抱きかかえられていた。

「おかえり、レニ。」
「ただいま、隊長。
 ただいま、アイリス。
 ただいま、ボクの仲間たち。」

ボクの心からの言葉だった。


レニの悩みを悩みました。
これが5年間もあいた最大の理由だったり。
もうゲームはどこいったって感じですね;;;
ちなみにマリアを引きあいに出したのは、レニと立ち位置がかぶりやすいからです。
ちょうど5話のヒロインで、イベントもいっぱいあるしw
これは好みで出したんじゃないよ〜っとちょっと言い訳(爆)

2010/9/24

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